情弱整形外科医の対戦日記

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疑似シングルファザーになった話〜娘の成長編〜

嫁が入院した翌日。
幸いこの日も夏休みを取っていて面会日に。
病院のラウンジで家族3人で過ごし、長女が寝てる隙に帰宅。

でも、それがまずかったのだろう。
帰ってきて、直後は空腹が勝ったのか、食事を摂る。

その後。

「ママ?」
ママを探し始めた。

「ママはお腹が痛い痛いだから、病院にお泊まりしてるよ〜」
泣きそうになりながら言い聞かせる。

すると、長女は玄関に向かう。
おや、と思い見ていると、自分の靴を手に取る。
そしてそれをこっちに持ってくる。
「くっく!」

涙がこらえられなかった。

「ママが…ママが、おうちに来れないから、迎えに行きたいの?」
「うん!」

…30にもなった大の男が娘の前でみっともなく号泣した。

ごめんよ、ごめんよって。
寂しい思いをさせてごめんって。
こんな小さな子が示した優しさに応えられなくてごめんよって。

1歳8ヶ月。
この年齢でも、もう周りのことは色々わかってるんだ。
いや、それはわかっていた。
わかっていたからこそ、入院する前に何度も言い聞かせていたんだ。

でも、ここまでか。
ママが入院して帰ってこれないなら、自分が迎えに行く。
そこまで考えられるのか。

ならば、別れ際グズらないように、と騙し討ちのように寝てる隙に連れて帰るんじゃなかった。
もう何もわからない新生児じゃないんだ。
たとえ喚かれようと、ちゃんとバイバイさせてあげないとダメだった。

これだけ賢く、心優しく育ってくれた我が子に、ごまかすような真似はするべきじゃなかった。

更に驚くべきことはその翌日に待っていた。
朝ご飯を一緒に食べているとき、ふと昨日の出来事がフラッシュバックし、目に涙が溜まってきた。
すると、長女がこちらを見る。
「どうしたの?」
作り笑顔で聞いた。
小さな手を、俺の肩に伸ばしてきて、ポンポン、と。
それも、俺の作り笑顔なんて目じゃないくらいの笑顔で。

再びの号泣。

俺は何をやってるんだ?
2歳に満たない娘に気を遣わせ、30の父親がみっともなく何度も泣いて。
覚悟を決めたんじゃないのか?

やっぱり俺は弱い人間だ。
気を張ろうとしてもふとしたきっかけでもろく崩れる。

でも娘がこれだけ頑張ってるんだ。
だったら俺はやらなきゃいけない。娘に余計な心配はかけるちゃダメだ。
今度は自分を騙すんじゃなくて、心からそう思えた。