情弱整形外科医の対戦日記

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疑似シングルファザーになった話〜嫁の入院編〜

前回の続きになります。

8月22日、元々夏休みをもらっていたため、嫁の受診について行くことに。
受診待ちの間、娘を連れて嫁が食べたいと言っていた和菓子や新型Switch(まだ入荷してなかった)を買いに行った。
そこへ電話が。
スマホの画面を見る。
着信元は、嫁。
電話に、出る。
内容は「入院した方がいいと言われた」

遂にこの日が来てしまった。
準備はしてきた。
保育園も入れることが決まったし、自分が家事する生活も徐々に慣れてきたし、当直は免除してもらえたし、娘には散々言い聞かせてきた。
それでも。
それでも衝撃は大きい。

プレッシャーが押し寄せてくる。
自分にできるのか?
医療過疎地で半ば救急医療のような診療を求められる救急要請、そして手術、外来診療、病棟業務をこなしながら、2歳に満たない長女の面倒を見る。
これが俺にできるのか?

1人暮らし歴は長いから自分の面倒は見れる。
でも、この小さな命を守って生活することが俺にできるのか?

その日は入院に必要なものの手配をし、日中はもう何も考えずに何とか娘を寝かしつけるところまでいき、ベッドの中でひたすら自問していた。

弱音を吐けば何か解決するのか?
Twitterで弱音を吐いたらきっと、優しい人たちが多いから慰めてくれる。
「無理するなよ」
こう言ってくれる人がいる。

でも、そうじゃない。
そうじゃないんだよ。

やるしかないんだ。
俺が面倒見なきゃ長女は死ぬ。
俺が仕事で手を抜けば他のスタッフにしわ寄せが行くし、最悪患者が死ぬ。
俺は父親だから。
俺は医者だから。
弱音を吐いていい立場じゃない。

弱音を吐いて、優しい言葉をかけてもらうのってのは魅力的だ。
弱った精神にはよく効く。
それに甘えたくなる。
甘えて…サボる理由を見つけたがる。

でもそれじゃダメだ。
ダメなんだよ。

今の状況でそれはダメだ。
医者を選んだのは自分。
長女がまだ幼い状況で二人目を作ることにしたのも自分。
だったら、周囲に迷惑は極力かけるな。
だったら、長女を不幸にするな。
今必要なのは「無理するな」じゃない。
「無理してでも家族と患者を守れ」だ。
勘違いするな。
俺は被害者じゃない。
この状況は俺が招いたものだ。
俺にはそうする責任がある。

それに普段の俺はなんと言っていた?
常々「勉強はそれ自体よりも能力を鍛え、器を拡げることに意味がある」と言っていたじゃないか。
だったら、それを示せよ。
鍛えた能力で、拡げた器で、この程度の窮地余裕で乗り切ってみせろよ。

もちろんこんなのは戯言もいいところだ。
多少勉強頑張ってたからってこんな状況を切り抜けられる能力がつくわけがない。
でも、そう自分に言い聞かせないと、挫けそうだったから。
挫けてしまったら全てが崩れてしまいそうだったから。
自分で自分を騙し、遂に父1人娘1人の生活が始まった。(続く)